読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

プーブロ

日々の出来事から考えたことや、ふと思いついたこと、主に、そうした頭の中の出来事が吐露されることと思います。アウトプットの場ですね。

祖父の在宅介護記録⑲ 10月26日(日)

『The End』

その日は夜中1時に体交を行った。

友人に教わったように、全部のクッションを外してリセットする。

ケアマネさんに教わったように、背中に手を通す。

じょくそうのところはベッドを押して圧を下げてみる。

祖父は、少ししかめっつらをして両手が上がる。

この意味は分からないが、後に父は迎えが来ていたんだと言った。

 

夜中はたいていアラームが鳴らない。

ところがこの日は違った。

立て続けにアラームが鳴るものだから飛び起きた。

深夜2時過ぎである。

前日、気切部からの痰が多かったため、またたまってるかもしれないと思った。

しかし・・・気切部から挿入したカテーテルは途中でストップしてしまった。

仕方なくストップしたところから吸引したが、痰はたまっていなかった。

そして・・・カニューレのふたをしたときに口からの吸気の漏れが確認できないことに気づいた。

ついさっき、漏れた酸素のために動いていたベロが動かない。

そのの瞬間、なんだかおかしいと感じた。

 

私は祖父をゆすった。

「じーじり、じーじり」と声をかけた。

パルスオキシメーターは反応していない。

脈をみるが確認できない。

私は父を起こしにいった。

「じーじりが、死んじゃったみたい・・・」

小声だったが、父は慌てて飛び起きた。

父も同じように、脈をみる。

私はドクターに電話し、ドクターに促されてナースにも電話した。

「吸引しようとしたら、反応が無くて、脈もとれないんです。」震える低い声で言った。

父は妹に電話し、息子に電話した。

 

最初に駆け付けたのはナースだった。

ナースが脈をみて、目に懐中電灯を当てた。

脈は打っていないし、瞳孔は開いていると言った。

「このまま、ドクターが来るまで機械は外さないでおきますね。」

そして、これからの段取りを説明してくれた。

常に、家族をねぎらいながら。

叔母が到着し、弟夫婦も来た。

その後ドクターが駆けつけ、機械を外して脈をみた。

ペンライトで瞳孔を確認したあと、携帯電話の時刻を見た。

「3時32分、死亡を確認しました。」

合唱。

よくテレビであるような病棟での臨終のシーンを回想したが、ここが自宅であることが誇らしい気がした。

顔は涙でぼろぼろである。

このあと、ドクターが病院に戻られて死亡診断書を書く。

それを父が頂きに行く間、ナースが祖父を整えてくれる。

私は、何かお手伝いしたいと言ったが、この間は待っていてと言われた。

祖父の管を全て抜いて、穴に綿を詰めて体を拭くらしい。

そうした処置までナースがしてくれるのかと思うと、本当にナースの仕事の幅は広く、頭が上がらない。

私は、祖父の死では泣かないだろうと思っていたのだけれど、この時点で既にかなりぼろぼろになっていたことにも驚いた。

だがしかし、それ以上に自分が経験した死の前後というものに、なにかとてつもなく感動していた。

実際、死の直前の人間がどういう風であるのかを知らなかったものだから、祖父の死が間近であることに気付けなかった。

もしかしたら年を越せると思っていたから、そんな私にとっては急な出来事だった。

これが死というものなのかという体験と共に

なんてあっけないものか、なんてはかないものかという侘しさがこみ上げた。

 

私は、この18日間、帰宅できたことに喜んで、毎日の作業に追われ、話せない祖父の気持ちなんかを抽出することがおろそかになっていたと反省する。

まだ、これからのやってあげたいこともあったし、もっともっと介護に慣れたかった。

本当に完璧にはなれない。

周囲はねぎらってくれるが、やはり心残りはぬぐえないのである。